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    4/30/2006

    常真入道

    本日4月30日は,源義経,足利尊氏,アドルフ・ヒトラー,そして,個人的にはその事故死が惜しまれてならないF1ドライバーのローランド・ラッツェンバーガーと,有名人の忌日となっている。
    その中でも,歴史上あまり表面に出てこない人物について触れてみたい。

    織田信雄-おだのぶかつ-1558-1630。
    名を見て分かるとおり,織田信長の息子である(二男)。
    同年の異母弟信孝よりも何日か遅く生まれたが,侍女が信長に早く届け出でしたため,二男となったという。
    幼名茶筅丸。
    父信長自らの命名だが,何でも茶筅髷が結えるくらい生まれたときに頭髪が生えていたから,とのことだ。

    幼くして伊勢の豪族,北畠氏の名跡を継ぐ。
    当主(というか養父)北畠具教は,信長に敵対したので,信雄の家督は体の良いお家乗っ取りだったのだろう(やがて信長・信雄に殺される)。

    で,信雄であるが,信長在世中は軍功らしいものは何も伝わっていない,というか,私が知らないのかもしれないが,天正7(1579)年に独断で伊賀に侵攻し,地侍集団の激しい抵抗に遭い信長の不興を買ったことと,翌々年,丹羽長秀や滝川一益といった織田家精鋭を率いて,ようやく伊賀を制圧したことぐらいしか無いのかもしれない。

    本能寺の変の際は,居城伊勢松島城にあって,隣国伊賀の国衆が不穏な動きを見せたので,弔い合戦どころではなかった,という説と,近江まで侵攻して何と父がその理財と叡智を傾けて建てた安土城を焼くという暴挙に出た,という説とがあるが,前者が正しいのでは,と思う。
    伊勢衆の多くは,弟信孝や丹羽長秀とともに四国征伐軍として駆り出されていた,と考えられるからである。

    その後,賤ヶ岳の戦いでは秀吉と組み弟信孝を討つも,その織田家を蔑ろにする独断に袂を分かち,家康を頼る。
    その結果,起こったのが天正12(1584)年の小牧・長久手の戦い-つまり秀吉・家康唯一の戦いである(そして,局地戦では家康が勝った)。
    ところが,秀吉の謀略にかかり単独で講和。
    秀吉-家康の講和の布石として,見事に秀吉を助けることとなった。
    秀吉政権下では父の故知尾張清洲を領有(50万石はあっただろう)。
    従三位大納言に任ぜられ,天正16(1588)年の後陽成天皇の聚楽第御幸に際しては,尾張大納言と呼ばれる。
    このあたりが,彼の絶頂期であろう。

    ところが,止せば良いのに,小田原の役で後北条氏が滅んだ後,秀吉による駿河転封を拒否したため,大名としての地位を失い下野那須に追放。
    さらに羽州秋田,予州今治と,北から南へ身柄を移される。
    その際,剃髪して常真と号す。
    秀吉の怒りが解けたのはその2年後で,信雄は御咄衆として召し出され,長男の秀雄は越前大野郡4万5千石の大名となる。
    信雄も捨て扶持として,大和国内に1万7千石を貰っていたという。

    そして,天下分け目の関ヶ原となる。
    おそらく大阪城内に詰めていたからか,畿内に所領を持っていたからか,父子共に西軍に与してしまい,戦後処理で失領。
    その後,秀頼に仕えて大坂城に出仕するも,東西手切れに際して大坂城を脱出。
    そのまま二条城で家康に会い,東軍となる。
    大阪の役後,上野・大和に5万石を領する。
    寛永7年(1630)4月30日没,73歳。

    ・・・という毀誉褒貶に満ちた人生だが,どうも父の血は全く受け継いでないようで,肝心なところでミスして判断・選択を誤っているような気もする。
    しかし,乱世生き抜いたこういう人こそ,勝利者の一人ではないか,と思う。
    能の名手としても知られ,茶人でもあったようなので(さらに年下の弟長益の方が千利休の高弟として知られているが),風流な人物でもあったようだ。
    さらに,弟信孝は秀吉により自害させられ,織田宗家を継いだ秀信(信長の長男信忠の子,秀吉が擁立した三法師丸)は関ヶ原で西軍に属して岐阜城を失い高野山に蟄居・夭折,と悲惨な末路を辿ったのに対し,彼と前述の弟長益(有楽斎-うらくさい-東京の有楽町は彼の屋敷が地名の語源)のみが天寿を全うし,平穏な余生を過ごしたと思われる。
    歴史小説の主人公にはなり得ないかもしれないが,血生臭い時代を生き抜き,何となくほっとさせられる生涯である。
    子にも恵まれたようで,秀雄・高雄・信良・高長・信為・良雄の名が伝わっている。
    信良の子孫は羽州天童藩(将棋の駒で有名),高長の子孫は大和柏原藩主として栄えた。
    全くをもって慶賀に堪えない。

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