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日志


2005/4/8

竜馬がゆく

司馬遼太郎著「竜馬がゆく」,何度目かの再読了。
本年1/21,及び1/24のエントリのために再読を開始してから文庫本八冊,一気呵成に読み終えた。

いやー,面白い。
まるで初読のようなときめきと,幾度かの過去の再読を思い出させる懐旧の念とが交錯し,絶妙なハーモニーを奏でる。
武田鉄矢は十八歳でこれを読んではまったそうだが,私の自慢は十五歳で初読したことだった・・。

前半,剣の道を志した十九の竜馬が,寝待ちの藤兵衛なる泥棒を家来に東海道を江戸へ向かうあたりは,「道中もの」の時代小説を読むような楽しさがあるし,江戸桶町の北辰一刀流千葉道場で修行を積むあたりは,「桃太郎侍」等の山手樹一郎の時代小説や,子どもの頃読んだ武内つなよしの漫画「赤胴鈴之介」に接したときのような高揚感を感じる。
黒船来航,土佐勤王党結成と瓦解,脱藩と幕臣勝鱗太郎との出会いといった歴史上の出来事が劇的に描かれていく。

後半は,神戸海軍塾創設と挫折の合間に池田屋事件や禁門の政変といった惨劇を挿入し,長崎亀山社中結成と海援隊の誕生,薩長同盟と第二次長州征伐,そして船中八策と大政奉還,と刻々と変転する歴史を体感するような錯覚に陥ることがしばしばあった・・。

読書という行為に対する読み手の意欲をかくも刺激・喚起し,人生に対する思いを新たにさせ,歴史への興味・関心を限りなく誘発する,というまさに奇跡の書と言っても良いと思う。
人生,読むべき本は数多いと思うが,中でも第一に指折られるべきものとして万人に薦めたい。
特に若い時にこそ読むべき,と痛感している。


 竜馬は身を起こした。このさきが,陸奥(陽之助宗光-後の外務大臣)が終生わすれえぬせりふになった。
「世界の海援隊でもやりましょうかな」
 陸奥がのちのちまで人に語ったところによると,この時の竜馬こそ,西郷より二枚も三枚も大人物に思われた,という。
 さすがの西郷もこれには二の句がなかった。

 

竜馬が作成した西郷をはじめとする薩摩藩士たちに新政府の構成員を披露した際,その中に最大の功労者たる竜馬の名が無いことを,西郷が訝り,
「この表にお前さぁの名が見あたらんが,どぎゃんしたものかの?」
と尋ね,竜馬に
「わしゃ,役人は性に合わんきに」
と返され,
「役人せずに,何ばしなはる?」
と聞き返した答えである。
まさに天馬空を征くが如し,とはこのことだろう。
最後に,結びの一文を紹介して,このエントリを閉じたい。

 

  天に意思がある。
 としか,この若者の場合,おもえない。
 天が,この国の歴史の混乱を収拾するためにこの若者を地上にくだし,その使命が終わったとき惜しげもなく天へ召し返した。
      ~中略~
 時代は旋回している。若者はその歴史の扉をその手で押し,そして未来へ押し上げた。

 

(以上,引用文は「竜馬がゆく」第八巻「近江路」(終章)より。文春文庫刊)

2005/2/12

菜の花忌

1/21及び1/24の拙エントリを書くに当たって,司馬遼太郎著「竜馬がゆく」を幾度目かの再読中でしたが,迂闊にも今朝新聞を見ていて,本日が9回目の「菜の花忌」であったことに気付きました。

大動脈瘤の破裂によって,この高度成長時代を代表する偉大な作家が逝って9年。
残された作品は,色褪せるどころか,今尚光芒を放っていると言えます。
私が,司馬作品にはまったのは,当時大河ドラマの原作だった「国盗り物語」がきっかけでしたが,70年代~80年代にわたって,とにかく読みふけりました。

「竜馬がゆく」に関しては,いずれ独立したエントリで述べようと思っていますが,今回は,書評などという大それたものではなく(とてもとても恐れ多くて・・),今まで読んできて,印象に残った作品,そしてお薦めしたい作品を紹介したいと思います。

竜馬がゆく
・言わずと知れた司馬文学を代表する傑作。菊池寛賞を受賞。詳しくはいずれ触れたいが,同時期に「燃えよ剣」,「国盗り物語」を同時執筆していたとは凄い話だ。

尻啖え孫市
・戦国末期,一向宗石山本願寺と共に最後まで信長の統一事業に抵抗した紀州地侍鉄砲集団雑賀党の首魁・雑賀(鈴木)孫市(重秀とも重幸とも)の痛快な行状を描く。かなり創作性が高いが,戦闘の描写の迫真性は随一。

坂の上の雲
・秋山好古・真之兄弟に正岡子規を絡めて描く明治の青春群像。日本海海戦でその盛り上がりはピークに達する。2007年の大河ドラマ(特別枠?)とか・・・。

・「播磨灘物語
とにかく読むと黒田官兵衛(考高・如水)が好きになる。生き様が爽やか。

・「功名が辻
静岡県と高知県の皆さんは,ぜひ読みましょう。これと「夏草の賦」+「戦雲の夢」を読んだ後に,「竜馬がゆく」を読むと理解が深まること請け合い。来年の大河が始まる前に・・。 

その他にも「関ヶ原」+「城塞」とか,「花神」+「世に棲む日々」とか,以前ちらりと紹介した「峠」,そして「翔ぶが如く」,と,まだまだお薦めはあるのですが,またの機会に・・・。

因みに,今日は夕方書店に行き,週刊「街道をゆく」-湖西の道・近江散歩と白河会津の道を買ってきました・・・。

 

2005/1/19

「街道をゆく」

仕事の帰り本屋に寄って,司馬遼太郎,週刊「街道をゆく」(朝日新聞社)を買う。
昨日刊行されたばかりのA4変形版の,所謂ムック誌で,創刊特別価格400円也。
週刊朝日に長期にわたって連載された司馬遼太郎のライフワークとも言うべき「街道をゆく」(朝日文芸文庫刊)の舞台を訪ね,最終的に50巻で完結するらしい。

今回は,四国の土佐から伊予に抜ける檮原街道で,「龍馬脱藩の道」とある。
成る程,司馬遼太郎の代表作にして,菊池寛文学賞を受賞した「竜馬がゆく」の第三巻(文春文庫刊)に,竜馬が後に海援隊士となる沢村惣之丞(関雄之介)とともに脱藩するくだりがあったが,阿波から讃岐へ出る幹線ではなく脱藩であるから裏街道的なルートをとったことが当然と言えば当然で,興味深い。
早速,今夜のうちに見るとしよう・・・。

この手のムックは,20年ほど前に出版された「日本の歴史」あたりが草分け的存在と思うが,何故か私が買うのは創刊号のみ,ということが結構あったりする。
理由は簡単,創刊特別価格で350~400円と安いからだ(笑)。
で,面白かったりすると続けて買ったり,興味のある部分のみ買ったりもしてきた。
書架を調べたところ,今まで買ったのは,週刊「日本の街道」(講談社),週刊「神社紀行」(学研),週刊「ビジュアル日本の歴史」(デアゴスティーニ・ジャパン),週刊「日録20世紀」(講談社),週刊「鉄道の旅」(講談社),週刊「おくのほそ道を歩く」(角川書店),週刊「世界遺産」(講談社),週刊「古寺をゆく」(小学館),週刊「世界紀行」(講談社)等々だった。
当然のことながら,創刊から最終刊まで全部買ったものは無い(笑)。
色つきのものが,5冊以上買ったもので,それだけ興味が長続きした代物と言える。

今日寄った書店では,「特製バインダー」なる大型のフラットファイルのようなものも隣に売っていたが,私が買うことはあり得ないだろう・・・。

さて,「街道をゆく」シリーズ,果たして何冊買うことになるだろうか。
次刊は「湖西の道-近江散歩」でその次が「会津道」,そして「高野山道」,「三浦半島記」と続くので,しばらく買いたいとは思っているが・・

2004/12/21

「ヒロシマのうた」

児童文学者の今西祐行氏が亡くなられた。
NHK児童文学奨励賞を受賞した「肥後の石工」が一番有名な作品と思うが,その他では,小学生の教科書にも掲載された「一つの花」,そして「ヒロシマのうた」の短編二作も名作という名の範疇に入れても良い作品だと思う。

「一つの花」は,出征する若い父親と,その幼い娘ゆみ子が主人公となる。
ひもじさにお握りを欲しがるゆみ子に一輪のコスモスの花を残して出征する父親の姿と,無邪気なゆみ子の様子が対照的に描かれ,涙を誘う。
やがて数年後,父親の顔を知らずに育ったゆみ子がコスモスの花に囲まれた家に母親と共に住み,今日は小さなお母さんになって,お昼ご飯を作る日,という描写でしめくくられるあたりで爆涙状態に・・。

ヒロシマのうた」は,8月6日夜の地獄絵のような広島市内の練兵場から始まる。
たまたまその日,被爆を免れた救護兵の「わたし」は,練兵場の隅で瀕死の母親から生まれたばかりの赤児を受け取る。
途方に暮れた「わたし」は通りがかりの人に赤児を預けるが・・。
「歌う」という言葉は「訴う」からの変化したもの,と作者は語る。
そして,地獄絵の中で生を受け,戦後の混乱を強く生き抜いていく一人の少女を歌い上げずにはいられなかった,と自著の解説を結んでいる・・・。

先日,たまたま2年以上シベリアに抑留されていた,というご老人と話す機会を得た。
北満で捕虜となり,シベリアに抑留後,強制労働によって死亡した日本人は数万人にものぼるという。
運良く2年ちょっとで復員することができ,舞鶴の港が見えてきたときは誰もが号泣したそうだ・・。
その方は今年85歳になられたとのこと。
足腰も矍鑠として,腰も曲がらず壮健そのもの。
どんなことをしても,こういう人には敵わないと思う・・。

今西氏が亡くなり,櫛の歯が欠けるように往事を知る人が少なくなっていく。
正しい歴史認識のためにも,そして不幸を繰り返さないためにも,こうした方々の存在は極めて貴重である。
そのためにも,この二作品は是非お薦めしたい。
今西氏のご冥福を祈ると共に,氏の講演記録をもって結びとする。

2004/12/14

さらば,「ズッコケ三人組」

今朝,例によって慌ただしく朝食をかき込みながら,ついつい新聞広告に目をやったところ(お行儀悪い),由々しき事態が出来していることに気付きました。

何と,11/8の拙エントリでもちらりと触れた,ポプラ社の「ズッコケ三人組」シリーズ(那須正幹著)が,最新刊の「ずっこけ三人組の卒業式」をもってシリーズ終了,とのことでした・・。
なかなか児童書にまでは目のいかない生活をしていますし,それでなくても活字離れが著しい昨今ですが,ふとしたきっかけで数年前「ズッコケ月世界旅行」とかいう作品を目にして以来,子どもにかこつけて数冊読んでしまい,同じポプラ社の「かいけつゾロリ」シリーズ同様,健全な笑いと主人公たちが織りなす楽しいエピソードの数々に感心してきたものです。
NHK教育TVでドラマ化され(土曜6時を楽しみにしていた子どもたちも少なくなかったことでしょう),98年には映画化もされたので(出来は今ふたつでしたが・・),もしかして記憶に残っておられる方もいらっしゃるでしょうし,何せ27年も続いたので,小学生の頃に夢中になって読まれた方もおられるかもしれません。

作者の那須正幹氏は1942年広島市の生まれで,その幾つかの作品は小学校の国語教材として教科書に掲載させてもいますが,作品の舞台である架空の稲穂県ミドリ市は,海あり山ありの風土のようです。
作品全般に感じられる明朗な風気は,きっと瀬戸内の風土から生まれたものに違いありません(映画のロケ地は三原市でした)。
残念なことではありますが,やはり一つの区切りということなのでしょう。

2004/11/8

「かいけつゾロリ参上!」

子どもが学校の図書室の本を借りてきました。
いつもは図鑑とか絵本が多いのですが,今回は物語文。
「かいけつゾロリの大金もち」
が題名。
ああ,これって日曜の朝にTVでやっているやつだ。
でも,当然のことながら爆睡している時間帯だし,原作がシリーズもので子どもたちに人気であることも知ってはいましたが,読んだことは全くありません。

どんなもんか,と,子どもと読んでみたら,何と,これ,大うけでした。
「怪傑」と銘打っているくらいですから,基本的に悪いことはするのですが,九分九厘成功したところでひっくり返されたり,あ,これは絶体絶命,警察に捕まってしまう,というところでは,絶妙な機転で危機を脱したり,とストーリー的にもひねりが効いているし,何よりも健全な笑いが充ち満ちていたのが心地よかったです。
以前,那須正幹著「ずっこけ三人組シリーズ」を感心しながら読んだことがありましたが,同種のものを感じることができましたし,ついつい,
「また借りてくんだぞ」
と,言ってしまいました。

所詮子どものもの,と侮ることなかれ。
読後感はすっきりそのものでした。
まずは,こちらを覗いてみてください・・・。